会長挨拶

全自者協は、『自閉症者の人権と生きるための発達保障、自立ならびに社会参加のために実践と研究を推進し、さらに、これに参画するものの研鑽と相互交流を促進することを目的』として、1987年に8ヶ所の自閉症者施設(自称)によって発足しました。

現在、会員施設は68施設で利用者定数は3236名、利用者の約75%が自閉症の人たちで、総会と研究会の他に、関係機関との情報交換や要望活動、会報の発行、調査研究活動、海外情報の紹介などを行っています。

わが国で初めて自閉症者施設が開設されたのは1981年ですが、制度的には知的障害者施設として運営してきました。自閉症の人たちは周囲の状況を正しく理解することができず、場面や状況に合った行動やコミュニケーションがうまくとれません。また相手の気持ちを理解し、周囲の人と共感的な関係を築くことが苦手です。さらに同じ行動を反復したり、決まったやり方にひどくこだわって、変化に強い不安や抵抗を示すなど社会生活をおくるうえで様々な困難に直面します。

自閉症の人たちは、その障害特性から周囲の人たちに理解されにくく、長年にわたって制度や施策の谷間に置かれてきました。不適切な環境や対応によって、生命に関わるような激しい自傷行為や他害行為、何が何でもやり抜こうとする激しいこだわり、激しい器物破壊、強度の睡眠障害等々、二次障害としての強度行動障害の状態に陥り、不登校になったり、通常の知的障害福祉サービスの利用を断られて、やむなく精神病院の閉鎖病棟に入院せざるをえなくなることや、時には精神病院への入院すらも断られることがあります。

そうした悲惨で困難な状況に対しての親たちの切なる願いによって自閉症の人たちの療育と自立のための拠点として施設づくりがすすめられてきました。家庭崩壊に至るような困難なケースを数多く受け入れ、それぞれの法人や施設の努力によって、手厚い職員配置と高い専門性に基づく自閉症療育(支援)を提供することで行動障害を改善し、さらには地域生活や就労に結び付けてきました。

平成14年度に自閉症・発達障害支援センターが発足し、平成17年に発達障害者支援法が施行されましたが、自閉症の人たちが正しい理解と適切な療育(支援)によって豊かに育ち安心して暮らすためには、まだまだ多くの課題があります。当協議会は、自閉症の人たちの療育と暮らしを支える専門施設の全国組織として、自閉症療育(支援)に対しての実践や交流、情報の発信をすすめるとともに、制度・政策のあり方について提言していきたいと考えています。

全日本自閉症支援者協会 会長
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